『僕がバナナを売って算数ドリルをつくるワケ』の著者で川崎フロンターレ サッカー事業部プロモーション部部長の肩書きを持つ天野春果さんの講演会に行ってきたので、メモ程度ですが残しておきます。
アビスパ福岡に関わる僕らにも使える話がたくさんでした。
「クラブつくりは、街づくり」
株式会社川崎フロンターレ
プロモーション部部長 天野春果さん
■業務を進める上で大事にしていること
何のための業務をやるのか
それを達成するためにどうすればよいか
「明確な目的と的確な手段」
これは、すべての業務において必要なこと
意識しながらやることが大事。
■Jリーグはどういう目的を持っているか。
・目的
サッカーを含んだスポーツで、この国を幸せに元気にする。
・手段
「百年構想~スポーツでもっと幸せな国へ~」
具体的な手段
・あなたの街に芝生広場、スポーツ施設を作る
・あなたがやりたいスポーツクラブを作る
・見る・する・参加するスポーツを通して世代超えた触れ合う場を作る
⇒百年構想は、目的を実現するために3つの手段を用意している。(ちょっと少ない?!)
リーグの構想はこうであるが、これを実現させるためには、各クラブがもっと具体的な手段に落としこみ実行していくしかない。
■川崎フロンターレの目的
「川崎フロンターレは川崎市及び川崎市市民の生活を未来永劫、豊かにする」
目的を作るときは、5Wが大事。
Where:川崎市
Who :川崎市民
When :未来永劫
What :豊かに
How :サッカー
特にwhen:未来永劫が大事。
なでしこジャパンやソフトボール北京金メダルなどのように、時にスポーツは人の心を豊かにし幸せな気持ちにするが、影響は一時的である。
フロンターレはそうではなく、未来永劫、市民が心が豊かになることを目的にしている。
■同じゴールを目指す5つのステークホルダー
同じ目的(志)を持つ人達を大事にする。
1.行政
http://www.summitmentalhealth.com/
まさしく同じ志を持っている。
2.スポンサー
地元の企業。営利的な一面も大事だが、それ以上にこの街を良くしたい、笑顔を作りたいという企業と話し合い、賛同してもらうことが大事。
3.ボランティア
350名登録、1試合で80名くらい手伝ってくれてる。
試合が見れるわけではないに、なにか特典があるわけではないが、フロンターレを通じて街を良くしたいと考えてくれている。
4.選手
サッカーをやってお給料をもらうというだけではなく、この街の人たちを幸せにするために活動しているかということを、クラブと話あっている。
そのために、選手に対してクラブの状況やファンクラブの状況等をしっかり伝え、こういうことが必要だとか、こういうことをしていきたいという話をする。
⇒これによって他クラブよりも協力的
5.サポーター
ここでいうサポーターはスタジアムで応援してくれているサポーターではなく、クラブの理念に賛同しサポートしてくれる人。
もちろんいわゆるサポーターの中にもいるし、町内会や商店街など賛同してくれる人はすべてサポーター。
誰が誰とつながっているかは、わからない。
こういう方々と知り合って、つながっておくことが大事。
■強化(チーム)と事業(ホームタウン)
目的を達成するために、どう進めていくのか。
強化(前輪)と事業(後輪)の2輪が大事だと考えている。
・強化
サッカーチームだからチームを強化することは第一
・強いチーム
・優勝する、タイトル取る
・代表選手がいる
・タレントがいる
などなど。
しかし、これだけでは状況が悪くなった時に立て直すことができなくなる。
昨年、代表選手の移籍、成績の低迷があったが、事業をしっかりやっていために、観客数の減少数が他クラブよりも少なかった。
■事業を進めるために
事業を進めるためには、プロモーションが非常に重要であると考えている。
▼プロモーション手段の「5条件」
1.地域性、郷土愛
例えばレジャー産業と考えた場合、ディズニーランドやお台場などと土日を争うことになる。
その際、地元だから行きたいと思えるようなものである必要がある。
また、地元ということでホッと出来るような場を提供する
遠くのイタリアンより、近くの定食屋。
2.話題性
ギャップ、意外性
3.公共性、社会性
一般紙に載せる=サッカーを知らない人にも伝えることができる。
4.低予算
クラブの事情はあるが、企画にお金をかけない。
得てして、お金をかけるよりも、かけないほうが良い企画になる場合が多い。
タイアップをつけてスポンサーの魅力も利用する。
全部タダでやる。
5.物販
プロモーションをやる際に、物販を行なって収益にもつなげる。
6.親父ギャグ
頭に残るフックを作る。
▼プロモーションのパターンを作る
プロモーションは、同じ事を続けてやることはできないので、パターンを持ち、組み合わせで考える。
プロモーションのパターン
1.一発物(CM型)
2度とできないようなモノ
2.継続物(ホームアローン型)
念に一度くらいならあきないもの
風物詩的なプロモーション
例)おフロんたーれ
3.一発+継続(男はつらいよ型)
タイトルは同じだが、ヒロインや内容が異なる。
例)多摩川クラシコ
4.生活の一部(サザエさん型)
生活に溶けこむようなプロモーション
例)算数ドリル
このように、5つ(+1)の手段と4つのパターンで考えている。
■プロモーション事例
▼尾崎豊+行政+社会性+スポンサー+物販+親父ギャグ(一発型)
8月15日広島戦。
8月15日決戦!などとプロモーションを打っても盛り上がらない。
15日→15の夜→「盗んだバイクで走りだす」→
バイクを盗まれたくないと思っているところ。
→川崎市地域安全推進課にスポンサーになってもらい、バイク盗難防止キャンペーンを展開。
フロンターレオリジナルワイヤーロックを製作(先方予算)
→交通安全協会
フロンタのリフレクター(反射板)
交通安全教室の開催
通常では、集まりにくいイベントもフロンターレを介することで大盛り上がり。
これだけにとどまらず。
→15(イチゴ)かき氷
→レタス15円
→梅沢由香里「15(囲碁)教室
→フロンターレ自転車(フロチャリ)販売
※プロモーションを提案する際、相手がやりたいことや目的を考えて、それに沿った企画を提案する
そうすると、相手も乗りやすくうまくいきやすい。
■街づくり活動のキーワード
1.ルービックキューブ的思考
見た瞬間にダメと思っても、どこかに糸口がある。
物事を多面的に見る。
(テトリス的と考えたほうがわかりやすいかも)
2.逆算力
ゴールを想像する。
時間軸に落としこみ、ゴールするためにマイルストーンを決めていく。
3.やる気
目的達成のためにやりきるという強い気持ち
■最後に
スタジアムにくるとわかるが、家族の笑顔や知らない人たちがサッカーを通じてつながっていったり、試合後お酒を飲みに行って日頃のモヤモヤを解消したりとクラブはそういう力を持っている。
感謝の気持ちと謙虚な姿勢を忘れずにこれからもやっていきたい。